Q:「劇団 鹿殺し」という劇団名の由来は?

A:詩人の村野四郎さんの「鹿」という詩からインスピレーションを受けて付けました。その詩では崖で夕陽を見ている鹿がいます。後ろから猟師が銃口を向けて命を狙っているのを気付いていながら、ただ夕陽の美しさに集中し、命を懸けて夕陽を見ている姿がカッコ良いんです!自分の命があと少しと思ったときに、一番生きていると実感する。生きている瞬間が燃え上がるという詩です。
劇団だけで食べていくのは大変なので、命懸けだ!という気持ちです。それを面白い感じでいうと「崖っぷち」ですね。あとは観ているお客さんの立場になったときに、「グワッ」と「あぁ、生きているな」と感じる舞台にしたいなと思い、この劇団名にしました。


Q:劇団を旗揚げしたきっかけは?

A:現在16年目になりますが、最初はここまで続けられると思っていなかったです。大学のサークルで舞台の台本を探しているときに、劇作家、演出家、そして小説家という多彩な才能の持ち主「つかこうへい」さんを知りました。私が福岡の筑豊の出身で、つかさんが隣町の出身なのですが、同じ方言で戯曲を書いておられたのでこの人のお芝居がしたい!と思ったんです。でも、結構過激な内容なので女子ウケが悪くて、多数決で全然やらせてもらえなかったです(笑)。なので、つかさんの作品を思い通りに演出したい!と思ったのが最初の劇団旗揚げのキッカケです。
大学卒業後、私と代表の丸尾も一度就職して劇団を休んだりもしました。その後、戻ってきたときにやっぱりオリジナルでこれから続けていこうと、もう一度スタートしました。なので、東京に進出したときは、命懸けで、2年で結果出なかったら辞めようと決めていましたね。

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Q:演出家が別でいるのではなく、ご自身で役者も演出もされている上で気をつけていることは?

A:日本では演出して自分が出演するパターンがあまりないので、悪いように取られてしまいがちですね。座長芝居になるとか言われてしまったり。なので、自分が出るシーンは客観的に見るために代役を立てて、その方が演じた通りに私が本番で演じています。
ミュージカル映画の「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」という元々舞台の作品があるんですが、それは完全に作・演出・主演を1人でされているんです。この方にしか作・演出・主演が出来ないなという作品で、これが一番カッコいい形だなと思っています。なので、作は丸尾ですが、演出・主演を務めいるからこそだな!と思ってもらえるような作品を作りたいですね。

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Q:劇団鹿殺しではライブもされていますよね?

A:元々は劇場にお客さんを呼ぶために始めました!特に関西ではいつも同じお客さんに来ていただいていたので、道行く人にも来てもらわないと演劇界全体としては人数が増えないと思いました。そこから劇場に少しでも新しいお客さんに足を運んでもらおうということで、路上パフォーマンスを始めたことがキッカケですね!隣でバンドとかストリートミュージシャンの方が路上ライブをしているので、その人たちと一緒にストーリー性のある音楽劇をしてみたこともありました。普段、ライブハウスにしか行かない人たちを呼び込もうって感じで!関西ではいつも元々スタークラブというライブハウスの店長をしていた松原裕さんにCOMIN'KOBE(カミングコーベ)の第1回から呼んでもらい、毎年出演させてもらっています。関西ではフェスで初めて『鹿殺し』を知っていただくお客さんが多いですね。なので、関西公演では劇場でのお客さんというより、COMIN'KOBEで『鹿殺し』を知ったという"演劇を今まで観たことがなかった方"が来てくれますね。
大きい声で笑ってくれたり、途中で嘘やんとか突っ込んでくれたり...。理想的なごちゃごちゃっとした客席になります。初めてお芝居を観るっていう方が、素直にお芝居ってこんな感じなんだってところから楽しんでくれたら嬉しいです。

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Q:お芝居に対する美学みたいなものはありますか?

A:一番はやっぱりお金をいただくものなので、それに相応しいものでなければいけないなという思いはあります。割と等身大で行うお芝居も多いですが、私がお金を出して観に行くなら、自分に出来ないことをしている人を観たいと思うので、何かお金をとれるものであるようにということをいつも意識しています。だから、小道具や衣装ひとつにしてもこだわりたいです。来てくださるお客さんが会社やバイトで頑張って働いて稼いだお金を使っていただくので、お客さんとの信頼関係というものを大事にしたいなと。劇団としても、私自身もプロとして、お客さんのスターでありたいですね。


Q:劇団の「老若男女の心をガツンと殴ってギュッと抱きしめる」という合言葉がめっちゃいいなと思いました。こういうフレーズは降ってくるものなのですか?

A:つかさんの台本もそうなんですけど、感情が豊かすぎて自分をコントロール出来ないというか、普通の愛されるでは足りなくて嫌いって言うか好きって言うかどっちかにしてよみたいな。自分を置いていくなら骨折ってから行ってよ、傷つけてから行ってよ。というセリフが出てきたりするんですよ、つかさんの台本って。筑豊の気質なのかもしれないんですけど、私はドカンとくるようなお芝居が好きなんです。最初は怖いと思う人がいるかもしれないんですけど、ガンッって殴られてエッってなってるところに、愛情がバッと入ってくると、同じ愛されるでも愛されたって感じがするなって思うんですよね。DVみたいですけど(笑)。普通に愛されるよりもっていうんですかね?18歳のときに一生懸命考えてこれだって思いました!


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Q:これからの目標はありますか?

A:心と身体の健康を保って長く続けることですね。そうじゃないと、細かいところにこだわれなかったりして、最後まで目が行き届かなくなって、諦めそうになるので。なので普通のことかもしれませんが、精神力とコンディションを保てるように健康を大事にしたいです。神社にお参りするときにいつも劇団のメンバーの健康を祈っています。健康な心と身体で、観た人が健康っていいなって思えるものを作りたいなと思っています!こっちが不健康だと作品も不健康な印象になってしまうので。私自身、シルク・ド・ソレイユとか歌舞伎が好きなんですが、お金を払うだけのことはあるなってものを観た後って、自分も運動出来たらいいなとか健康的な思考になりますよね?そういうエンターテイメントでありたいです!考えさせられて未来って暗いなって終わるよりかは、せっかく休みの日に行くんだから、帰りは一駅歩こう!みたいな感覚にしたいなと思っています!


今回の舞台「パレード旅団」の舞台写真はこちら

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《舞台「パレード旅団」を観た野口一真の声はこちら》

いじめや家庭問題といった難しいテーマに挑むoffice shika rebornの第1作「パレード旅団」。
老若男女の心をガツンと殴って、ぎゅっと抱きしめる という劇団『鹿殺し』のテーマを感じました。観る人の心に直接語りかけてくるような、笑いあり涙あり、そして終わった後にはなにか考えさせられる、そんな舞台でした。
シビアなテーマのパレード旅団という作品だからこそ、より強く心に訴えかけられるものがあるんです。
シュールな笑いや劇中のダンスにも注目です!
インタビューさせていただいた、菜月チョビさんは演出家でもあり、ご自身も出演されています。なにより観ていただくお客様の存在を1番大事にされているのが印象的で、プロとしての意識をひしひしと感じました。インタビューをさせていただくことで、これまで数々の演出をしてこられた菜月さんの頭の中のほんの一部をのぞけたような気がしました。
音楽の分野にも活躍の場を広げられている劇団『鹿殺し』。これからのご活躍にも目が離せません!!!
ぜひみなさんにも直接感じて欲しいです。

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★インタビューさせていただいたのは...

『菜月 チョビ』さん
演出家・俳優。2000年、劇団鹿殺しを旗揚げ。全作品演出・出演。
ステージを最大限に使い、エネルギッシュなパフォーマンスと疾走感であふれる演出は、毎回観る者を魅了し続けている。
また舞台上で圧倒的な存在感を放ち、さらには新感線プロデュースいのうえ歌舞伎☆號『IZO』においては劇中歌を務めるなど、俳優としての演技力・歌唱力にも定評がある。

2013年10月から1年間、文化庁の新進芸術家海外研修制度によりカナダ留学を経験。
帰国後、舞台「曇天に笑う」(2015,2016年)で演出を務めるなど、演出家としても活躍の場を広げる。
2018年3月には平成29年度大阪市助成事業「大阪ドンキホーテ 〜スーパースター patch ver.〜」を演出予定。

【HP】

インタビュアー : 野口 一真(MONAモデル)